2025年4月
校長先生が転校生にされる3つの質問(2025/04/12)
全国行脚の楽しみの一つに校長先生とのお話しがあります。校長先生の学校経営の目標をお聞きすることがあります。その校長先生は、「学級担任の時は、『笑顔』『元気』でした。校長となり、次のように設定しました。」とおっしゃいました。
①笑顔 ②元気 ③創造力
最後の「創造力」は、3月31日に降りてきたとおっしゃいました。「創造力」は、まさに令和の日本型学校教育に必要な力だと思いました。昭和時代の校訓がそのままの学校もありますが、
★学習指導要領が変わるときに校訓も修正を加えるという文化
も必要なのかもしれませんね。
さて、転校生に必ず3つの質問をされるというお話しも聞きました。
①好きな食べ物 ②好きな遊び ③好きな勉強
この3つの質問には深い意味がありました。例えば、好きな食べ物が「白いご飯」と答えた子どもには配慮すべきことがあります。例えば、好きな勉強が「算数」だと答えた子どもの中には、算数がとても苦手な子どもがいるという事実もあるそうです。なぜ、その子は算数が好きと答えたのか。このようなお話しを聞かせていただきました。少しだけ紹介致しました。
766・767校目 江戸川区立鹿骨東小・鹿骨松本小学校(2025/04/10-11)
★「指読み」の学習場面で子どもから学んだこと
今日の授業でとても大きな学びがあった。教材を音読させる時に「指読み」(人指し指を動かしながら読ませる)を指導する場面があった。小学校6年生である。ある児童の指が動いていないことが目に入った。きちんと読んでいることは分かったが、指を動かしていない。全員が指読みをしている途中で教室に聞こえるように「指」と言った。それでも動かさなかった。わざと指を動かしていないのではないことは分かった。その場ではそれ以上の指導はしなかった。授業後、校長室で校長先生にそのことをお話しした。校長先生から「手と目の連動が難しい子どもさんです」と教えていただいた。他の学習の場面でも連動する動きに対して同様のことがあるらしい。体育では特にそうだ。縄跳びにしても手を回す、ジャンプするという連動した動きが必要となる。音読では、目と口の連動が必要だ。それに指を動かすということを追加することが、どれほど大変なことなのかを痛感した。今回も子どもに学ばせてもらった。
指読みのスモールステップ化が必要だ。
765校目 板橋区立紅梅小学校(2025/04/09)
R7年度の全国行脚がスタートした。板橋区立紅梅小学校。昨年度150周年を迎え、記念式典や記念誌の作成という大きなイベントをされた学校。地域に根ざした伝統校だ。さて、紅梅小学校からは昨年度も同じ時期にご依頼をいただき2年目となる。小宮孝之校長先生とは、五色百人一首での繋がり。もう25年のお付き合い。ご縁を感じる。今回の授業は、全国学テ国語記述式問題。6年生4学級合同の授業。120名を超える子ども達。学習用具(鉛筆、赤鉛筆、定規、消しゴム)の確認からスタート。全員の学習用具が揃ったことを確認して授業をスタートさせた。「誰一人取り残さない授業」の第一歩が学習用具の確認となる。授業後、下校する子ども達とすれ違った。ある子が「先生の圧、凄かったです。でも、カッコよかったです。」と笑顔で話してくれた。授業・講演の後は、校長室で若い先生方を中心にQAタイム。これが実に楽しかった。授業が始まったばかりでそれぞれに国語の授業で悩んでいる様子が伝わった。実際に教科書の扉のページを開いて発問を考えたり、ノートの取り方を話したりとあっという間の1時間だった。若い先生方の悩みを聞くことは、とても勉強になる。目指すべき峰を示すことも大事だが、現場の課題はもっともっと足元にあることを実感した。
何のために探究をするのかのビジョンが必要(2025/04/08)
日本教育新聞(2025/4/7)の記事に納得した。連載「人づくり 国づくり」970回の伴場賢一氏(一般社団法人Bridge for Fukushima代表)の寄稿だ。伴場氏は、東日本大震災後に復興を考える高校生によるプロジェクトの伴走を始めた。フィールドワークを通して漁場の衰退や、温泉観光客の激減を知り、高校生と様々なプロジェクトの伴走をすることになった。高校生のとっては、身近で価値ある課題を設定することになる。探究学習の必須条件である。伴場氏は、この後福島県教委から要請を受け、県立高校の探究の授業にコーディネーターとして関わるようになる。そのような中からの提言こそがまさしく探究学習の本質だと感じた。以下に引用する。
①本質的な意味において「何のために探究をするのか」というビジョンとミッションが固まっていない高校が多いようです。管理職や担当の教員が変わるとゼロからつくり直すようなものではなく、10年は変わらないビジョン・ミッションでなければなりません。その上で生徒にどんな学びを提供できるのか、ワクワクした話し合いの機会が必要です。
②これからAIを含めたITを使いこなす世の中になります。記憶、理解、応用だけでは通用しません。分析、判断、決定、創造する能力が必要です。探究活動でこれらを育むことができます。ただ、教員だけでは難しく、学校外で活動する大人をうまく使うと効果が上がります。
①②ともに、教師が探究をした経験知が必要なのではないかと思う。探究の経験のない教師には、探究学習の単元構成や枠組みを創造することは、難しいのではないだろうか。
担任発表での「はい!」という返事(2025/04/07)
いよいよ新年度が始まる。子どもも教師も期待と緊張が入り混じる一日でもある。始業式の後に担任発表がなされる場合が多い。校長先生から「4年1組 〇〇先生」のように発表される。長い間教職についていたが、教師の返事は実にさまざまだった。この時の教師の返事は、全児童から評価されている。名前を呼ばれたら
①明るく ②届く声で ③素早く 「はい!!」と返事をすることが原則だ。
この後、着席するのだが、もう一つ大事なルーティーンがある。私は、返事をして立った後、担任する学級の子ども達へ力強く目線を送った。始業式後、学級開きとなり、子どもの名前を指名する場面がある。子ども達の返事もいろいろだ。声の小さい子もいる。おちゃらける子もいる。笑顔の子もいる。この時のアドバルーンは、体育館での担任の返事が影響する。体育館での返事は、学級で子どもに求める返事の「お手本」でなければならない。指名する前に次のように言えばよい。
体育館で先生がしたように「はい!!」と返事をしてください(目線を送る)。
担任発表での担任の返事は大きな意味をもつのだ。
教室に「心地よい緊張感」を(2025/04/06)
明日が始業式の学校も多い。現役の頃、始業式で担任発表があり、校長先生に名前を呼ばれたら「はい!」と返事をして立つことを教えられた。返事をしない教師、声の小さな教師、笑顔いっぱいの教師、さまざまな対応をする。その全てを全校児童が見つめている。子どもは最強の目利きであることを肝に銘じておくことも大切だ。
さて、教室での初めての子どもとの出会いの場面だ。向山洋一氏がそれまでの教育界で力のある教師なら何となる感じていたことを見事に言語化したのが「黄金の3日間」だった。始業式から3日間は、子どもがしっかりと教師の話に耳を傾ける。黄金の3日間に学級のしくみや学習のルールを明確に伝えることが1年間を規定してしまうという意味だ。30年、40年前の子ども達は、まさしくその言葉どおりだった。しかし、今は多少子どもの様子が違うように思える。3日間も話を聞いてくれないのだ。最初の1日のしかも最初の30分ほどが限界だという子ども達もいる。そのような子ども達は「学級のしくみ」や「学習のルール」より先に教師の人間像を見抜いているように感じる。
全国行脚で多くの学級の授業を3~5分程度参観する。授業以前の何かが足りないと感じることが多くあった。教室に入った瞬間の「空気感」で、ほとんど授業の善し悪しが分かるようになった。一言で言えば「心地よい緊張感」があるかないかだった。「心地よい緊張感」とは、何によって生み出されるのかを考えるようになった。まだ、はっきりとしたことは言えないが、次のことが必要条件ではないかと仮説を立てている。
★「目力」「確認」「笑顔」
土台としての情報活用能力(2025/04/05)
東日本大震災で大きな被害を受けた南三陸を訪れるようになって4年が経つ。南三陸地方の小学校、中学校、高等学校で毎年授業の機会をいただくからだ。その際、震災遺構には必ず足を運び黙祷を捧げる。先日、ある方の講演を聞く機会があった。津波で大きな被害を受けた地域に足を運ばれ、建物が全て無くなっていたことに衝撃を受けられたという。しかし、残っているものがあることに気づかれた。それは、建物の「土台」の部分だったという。この話から「教育における土台とは何か」という話題に移っていった。教育における不易の部分だ。
私は、この話から別のことを考えた。今回の文科省の中教審に対する諮問(R6,12.25)の中で「情報活用能力の抜本的向上」という内容がある。従来の探究的な学びにおける「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・表現」のレベルを抜本的に向上させるということだ。「抜本的」とは、「問題や状況を根本的な部分から大きく変えようとするさま」とある。質の高い「学び」や個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実を支えるのが「情報活用能力の抜本的向上」なのだと理解している。現場の最重要課題の一つがここにある。日本の小学校、中学校には「情報科」という教科がない。小学校では、国語科に「情報」が設定されたが教科書の扱いも僅かだ。中学校では「技術科」で扱う程度だ。「抜本的向上」というからには、限定された教科・領域ではなく全ての教科でどのように育成していくかを明確にしなければならないはずだ。愛知県春日井市では、そのような研究がスタートしている。本年度の校内研には、何をテーマにするとしても「情報活用能力の抜本的向上」が重要な視点として導入されることが必要だろう。
質の高い「学び」を支える情報活用能力これが、これからの教育の「土台」となるのだから。 (孫のバレーの試合を見に行く日の朝)
新たな出立に向けて(2025/04/03)
本年度、NPO法人を閉鎖し個人事業として新たな出立となる。「教授法創造研究所」という屋号?は継承することにした。名は体を表す。この5年間は屋号のとおり新たな指導法を創造してきた。①全国学テ記述式 ②図読法 ③読解スキル7 ④複線型授業。
本年度から何を問題提起するか。文科省からの諮問。それを受けての教育課程企画特別部会での審議等から、次期学習指導要領改訂に向けての準備をスタートさせる。「授業」で具体化するのが使命である。
①情報活用能力の抜本的向上の研究と実践
②単元内自由進度学習の単元構成(図読法による物語文指導)
③単元内自由進度学習の単元構成(読解スキル7による説明文指導)
④深い教材研究方法のステップ(若い教師が追試可能なステップ)
まずは、この4点について研究をスタートさせる。
【お勧めの1冊①】『Learn Better』(アーリック・ボーザー、英治出版)